アニメ『怪獣8号』を観たとき、心の奥がざわついた人は少なくないはず。
戦う姿のカッコよさ、巨大な怪獣の迫力、そして何より──音楽が心に刺さった。
この記事では、第1期から第2期にかけて登場するオープニング・エンディング・挿入歌をぜんぶまとめて解説しながら、
「なぜこんなに熱くなったのか?」を、一緒にひもといていきます。
第1期の主題歌とエンディングが、なぜ“刺さった”のか
オープニング曲「Abyss」/YUNGBLUD
■ カフカの“内面”をそのまま音にしたような曲
2024年春に放送された第1期。そのオープニング主題歌「Abyss」は、世界的アーティスト YUNGBLUD が書き下ろした一曲でした。
「I’ve gone cold / And I’m stuck in the abyss all on my own」──
この歌詞が象徴するように、「Abyss」は“自分自身との戦い”をテーマにしています。
声優・福西勝也さんが演じる主人公・カフカは、自らの体に怪獣を宿しながらも「人として」戦おうとする。
そんな彼の、「叫びたいのに叫べない」葛藤を、そのまま音にしたような曲なんです。
■ 叫びたくなるOP映像とのシンクロ
泡のように漂う怪獣胞子、暗闇に光る瞳、疾走感のある2Dと3DCGの融合。
このオープニング映像は、“不穏”で“加速する”カフカの心を完璧にビジュアル化しています。
redditではこんな感想も──
“The Kaiju cells/spores releasing from the abyss… wonderful theme.”
まさに“沼”です。イントロの一音で「引きずり込まれる」ような感覚。
■ だから、「Abyss」は“扉”だった
この曲が流れるたび、私たちは“怪獣8号の世界”に入っていく。
それは、ただの始まりのBGMではなくて──
“カフカの感情に同調してから物語を観る”という、感情の準備運動でもある。
オープニングで心を開かせてから、本編へ導く。
そんな設計がされているからこそ、観る者の心に響くのでしょう。
エンディング曲「Nobody」/OneRepublic
■ こんなにも“やさしい絶望”があるだろうか
第1期のエンディング曲「Nobody」は、世界的人気バンド OneRepublic が手がけた楽曲。
パンクなOP「Abyss」とは対照的に、このEDは“やさしく、静かに、でも胸を締めつけるような”曲でした。
戦ったあとのカフカたちの表情、壊れた街並み、夕暮れのような光――。
その映像に、この曲がぴたりと寄り添ってくる。
■ 歌詞が描くのは、“壊れても生きていく”という覚悟
タイトルの「Nobody」は、“誰でもない存在”。
怪獣8号として生きるカフカの〈孤独と喪失〉が、そのまま重なります。
「誰にもなれなかった。でも、ここで生きている」
そんな覚悟を、OneRepublicらしい洗練されたメロディとハイトーンで包み込む。
聴けば聴くほど、涙がにじむ。
■ “感情の余韻”として機能するエンディング
物語のラストに流れるこの曲は、視聴者の感情を「言葉にできないまま」そっと包んでくれます。
バトルや葛藤の余韻を、そのままEDに引き継ぎ──
“あなたが今感じたもの、それは確かにここにあった”と、静かに伝えてくれる。
だからこそ、「Nobody」はただの締めではなく、“物語を終えるための祈り”のような存在だったのです。
第1期挿入歌まとめ:感情を“燃やす”仕掛けたち
『怪獣8号』第1期には、主題歌以外にも強烈に印象に残る“挿入歌”がありました。
それぞれの楽曲が流れるタイミングは、どれも物語のクライマックス。
つまり──感情のボルテージが最高潮に達する「その瞬間」に、音楽の力が加えられていたのです。
Scream feat. (sic)boy(第5話)
第5話で流れたこの曲は、変身後のカフカが暴れるシーンで使われました。
重く、粗く、刺さるようなビートと叫ぶようなボーカル。
それはまるで、“人間の理性”を突き破る怪獣の衝動を音にしたかのよう。
視聴者が「これもう人間じゃない」と感じたあの瞬間、その“不安”と“魅了”を音楽が加速させていました。
Warcry feat. 岡崎体育(第7話)
防衛隊の仲間たちが奮闘するシーンで流れた「Warcry」は、まさに士気を高める“戦いの音”。
岡崎体育さんのコミカルさと熱血さが共存したラップは、絶望に一筋の希望を通すような効果を持っていました。
ただ強いだけじゃない。
「それでもやるしかない」という、人間らしい覚悟を感じさせる挿入歌です。
Never Break Down feat. LEO今井(第10話)
第10話、隊長たちとの連携やカフカの覚悟が強まる重要回。
その後半、満身創痍でも立ち上がる彼の姿に、「壊れない」と歌うこの曲が重なります。
痛みを超え、恐怖を超え、それでも進もうとする人間の意志。
LEO今井さんの低音ボイスが、まるで“地鳴り”のように画面を支えていました。
こうした挿入歌たちは、どれも「物語の鼓動」として機能していたと思います。
場面の熱を増幅させるだけでなく、視聴者の“感情の回路”を開いてくれた。
だから、『怪獣8号』は何度観ても熱くなれる。
第2期の主題歌とエンディングが描く“新しい怪獣8号”
オープニング曲「You Can’t Run From Yourself」/AURORA
■ 北欧から届いた“魂の対話”
2025年夏、待望の第2期が始まりました。
そのOP主題歌を担当するのは、ノルウェー出身のアーティスト AURORA(オーロラ)。
「You Can’t Run From Yourself(自分からは逃げられない)」というタイトルが、すでにズシリと胸に刺さります。
これはもう、“カフカの物語”そのものですよね。
■ 歌詞にこめられた“自己対峙”のテーマ
前期で怪獣としての力を受け入れたカフカ。
でもその先には、「人間としてどう生きるか?」という問いが残ります。
この曲は、その問いとまっすぐ向き合うような歌詞が印象的。
“Wherever you go, you’ll find your shadow”
(どこへ行こうと、自分の影はついてくる)
逃げても逃げても、自分の“本質”は消えない。
そんなメッセージが、AURORAの透き通る声で何度も繰り返されます。
■ 映像との呼応が“内面の旅”を描く
OP映像は、第1期の疾走感とは違い、どこか静かで幻想的。
闇と光が交差するような背景に、孤独なシルエットのカフカ。
やがて仲間の手に触れ、“人”として立ち上がる──。
それはまるで、彼の内面を旅するような構成でした。
この曲が流れるとき、私たちもまた、「自分はどう生きたいか?」と問いかけられている気がする。
『怪獣8号』の主題歌は、ただの“OP曲”ではありません。
それは物語の“テーマそのもの”を歌う存在なのです。
エンディング曲「Beautiful Colors」/OneRepublic
■ “世界はまだ、美しい”と歌うエンディング
第2期エンディングを手がけるのは、前期と同じく OneRepublic。
タイトルは「Beautiful Colors」。直訳すれば、“美しい色たち”。
その言葉どおり、この曲には「絶望の中にも希望がある」という光の感情が込められています。
■ 歌詞が照らすのは、“生きる理由”
怪獣と戦う日々の中で、カフカたちは傷つき、迷い、失っていく。
でも、だからこそ「この世界にまだ希望がある」と歌うこの曲は、
“明日へとつなぐ架け橋”のような役割を果たします。
“You are the colors that I need”
(君は、僕にとって必要な色なんだ)
誰かとともに在ること、信じること。
それがカフカにとって、人として生きる意味に他なりません。
■ 前期ED「Nobody」との対比構造
第1期ED「Nobody」が描いたのは“孤独”でした。
対して「Beautiful Colors」は、“つながり”を描いています。
OneRepublicの楽曲が続投されたのは、この対比を意図した演出なのでは?と感じました。
同じアーティストによる“孤独→希望”の2曲構成。
これはまさに、カフカの成長の足跡なのです。
エンディングを見終わったとき、ふと胸の奥が温かくなる──
そんな余韻を残してくれる、優しい一曲です。
“物語と音楽”の関係を読み解く:感情と構造の設計図
ここまで紹介してきた主題歌・エンディング・挿入歌たちは、単なる“良い曲”にとどまりません。
実はどの曲も、物語の展開やキャラクターの心情と密接にリンクし、視聴者の感情を導く“設計”がなされているのです。
■ オープニング主題歌の役割:物語の“起点”として
第1期「Abyss」は、“心の中にある怪獣”を叫ぶ曲。
第2期「You Can’t Run From Yourself」は、“その怪獣と向き合う覚悟”を歌う曲。
どちらも、物語が「何と戦う物語なのか」を視聴者に伝える役割を担っています。
つまりOP曲とは、
- 視聴者の感情を作品に“接続”する装置
- 物語の主題(=戦う理由)を先に伝える宣言
そんな“扉”のような存在なんです。
■ エンディング曲の役割:感情の“余白”をつくる
激しい展開のあとに流れるEDは、まるで深呼吸。
「Nobody」も「Beautiful Colors」も、“その回の感情を言語化する代弁者”のような存在でした。
言葉にできない余韻や、胸に残るもやもや。
それを音楽がそっとすくい上げ、視聴者に「あなたの感情は、ここにあります」と差し出してくれる。
■ 挿入歌の使い方:物語の“山場”を押し上げる
一方、挿入歌は「観る者の感情を引き上げる装置」です。
とくにバトルシーンで流れる曲は、
- 物語の“熱量”を加速させ
- キャラの決意や覚悟に“音”で共鳴させる
そういう目的で構成されています。
音楽で“語らせずに語る”。
だからこそ、セリフがなくても胸が熱くなる。
それが『怪獣8号』の挿入歌の凄みです。
■ 感情と構造の絶妙なバランス設計
これら主題歌・挿入歌・EDの配置とタイミングは、全体を通して「物語構造」と緻密にリンクしています。
感情を高め、共鳴させ、落ち着かせていく。
その一連の“感情の旅”を支えているのが音楽なのです。
ファンの声が証明する、“音楽が届いた”という事実
音楽が感情に届いているかどうか──それを一番率直に教えてくれるのは、やっぱりファンの言葉です。
SNS、YouTube、reddit、X(旧Twitter)……。
世界中の視聴者が語った反応の中には、「あ、やっぱり伝わってるんだ」と確信できる瞬間がたくさんありました。
■ 「OP、何回も観ちゃう」中毒性と没入感
とくに多かったのが、OP「Abyss」や「You Can’t Run From Yourself」に関する声。
「イントロの泡の演出、最高すぎる」
「AURORAの曲が流れると、背筋がゾクッとする」
この“何度も観たくなる”という感覚こそ、作品の世界観と音楽がシンクロしている証なんですよね。
■ 「EDで泣かされた」感情の余韻設計
ED「Nobody」「Beautiful Colors」に対しても、こんな声が──
「あのED曲、泣かずに見られない」
「疲れた心に沁みる。毎週この曲に癒されてる」
どちらの曲も、視聴者の“感情の出口”として確かに機能していたんだとわかります。
■ 海外の反応も熱い!redditや海外フォーラムより
海外フォーラムでは、特にAURORAやYUNGBLUDの起用が高く評価されていました。
“Never expected AURORA to hit me this hard in an anime OP.”
“YUNGBLUD’s ‘Abyss’ feels like it was written just for Kafka’s pain.”
言語も文化も違っても、“心に響く”という体験は共有される。
それが『怪獣8号』の音楽の力なのだと思います。
音楽とは、「一人では言葉にできなかった感情」を、誰かと共有する手段でもある。
その意味で、主題歌やエンディングたちは、視聴者の“感情の通訳”として完璧な役割を果たしていました。
まとめ:『怪獣8号』の音楽が、私たちに残したもの
第1期・第2期を通して、『怪獣8号』の音楽は“感情の導線”として完璧に機能していたと思います。
- オープニングが伝えるのは、「これはどんな物語か?」というテーマの宣言。
- エンディングは、「あなたの感じたことは正しいよ」と寄り添ってくれる心の余白。
- 挿入歌は、言葉にならない想いを背中から押してくれる存在。
そしてそのどれもが、キャラクターの心情とリンクしているからこそ、視聴者の感情にも届く。
音楽が“BGM”ではなく“感情の主役”になっている。
そんなアニメは、実はそう多くありません。
■ “あなたの感情には、理由がある”
「この曲を聴くと泣きそうになる」
「なぜかわからないけど、鳥肌が立った」
そんなふうに、あなたが感じたことには、ちゃんと理由があります。
その理由をひもとくことで、作品への理解がもっと深まり、感情はより豊かになる。
この記事が、あなたのその“感動の理由”を言葉にするきっかけになっていたら、とても嬉しいです。
──音楽とともに物語を感じる。
『怪獣8号』は、そんなアニメです。
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