『ブラックトーチ』の黒猫・羅睺の正体は、かつて「黒き凶星」と呼ばれ恐れられた伝説の物ノ怪である。
その名は“凶事を呼ぶ星”を意味する古い天文用語に由来し、彼が元々は人型の姿をしていたという設定も、正体を読み解くうえで重要な手がかりになる。
長らく殺生石に自ら封じられていたため記憶の大半を失っており、その空白こそが物語全体の伏線になっている。
こんにちは、アニメライターの綾城あおいです。
今回は2026年7月4日からTOKYO MXほかで放送中のTVアニメ『BLACK TORCH(ブラックトーチ)』から、物語の核を握る黒猫・羅睺の正体について、原作の設定とアニメ最新話の展開を突き合わせながら、じっくり掘り下げていきたい。
「なんとなく強そうな黒猫」で終わらせるにはもったいないキャラクターなので、彼の名前・異名・封印の理由という3つの角度から、伏線の意味を一緒に読み解いていこう。
羅睺とは?作中で語られる正体の基本情報
まず基本情報を整理しておく。
『BLACK TORCH』は、タカキツヨシ氏による忍者バトルアクション漫画だ。
集英社「ジャンプスクエア」で2017年2月号から2018年4月号まで連載されたのち、WEBコミック配信サイト「少年ジャンプ+」に舞台を移し、同年7月11日まで更新が続けられた。
単行本は全5巻で完結している。
主人公は忍者の末裔として祖父・我妻寿正に育てられ、動物と話す能力を持つ高校生・我妻弐郎(あづま じろう)だ。
弐郎はある日、森の中で傷つき倒れている黒猫と出会う。
この黒猫こそが羅睺であり、その正体は、かつて「黒き凶星」の異名で恐れられた伝説の物ノ怪だった。
弐郎はそんな羅睺を守ろうとして一度は命を落とすが、弐郎の行動に心を動かされた羅睺が彼の体と融合し、傷を塞いで蘇らせている(原作1巻)。
つまり羅睺の正体を考えるうえで欠かせないのは、「単なる強大な妖」ではなく、「一度は他者に心を動かされて姿勢を変えた存在」だという点だ。
融合によって羅睺の刻印を宿した弐郎は、物ノ怪の監視と排除を行う国の秘密組織「公儀隠密局」の目に留まり、特務二課の新部隊「黒の灯火(ブラックトーチ)」に所属することになる。
なぜ「黒き凶星」と呼ばれるのか?名前と異名に隠された伏線
ここが今回、私がいちばん掘り下げたいポイントだ。
「羅睺(ラゴウ)」という名前は、実は作者の完全な創作ではない。
古くから東アジアの天文・占星の伝統に実在する言葉である。
九曜(太陽・月・五惑星に、羅睺・計都という2つの“見えない星”を加えた9つの天体)の一つに数えられ、日食・月食を引き起こす“影の星”として、古来より不吉・凶事の象徴とされてきた存在なのだ。
この史実的な背景を踏まえると、作中で羅睺が「黒き凶星」と呼ばれていることは、単なるカッコいい二つ名ではない。
彼の名前そのものが元々「見えないところで災いをもたらす星」という意味を背負っていたことになる。
つまり羅睺というキャラクターは、名付けの時点ですでに「本当は何者なのか、姿を隠したまま災いを呼ぶ存在なのか」という問いを読者に投げかけられている。
これは、原作を追いかけているファンの間でもあまり語られていない切り口だと思うので、ぜひ覚えておいてほしい。
物語内で語られる「黒き凶星」という異名と、天文用語としての「羅睺」の意味が二重写しになっている。
個人的には、この設計の巧みさこそが、彼の正体を読み解くうえでの最大の伏線だと考えている。
作品タイトルが「灯火(トーチ)」であるのに対し、主人公とコンビを組む相棒の名前が「見えない星=影」を意味するという対比構造も、意図的なものだろう。
光と影、灯と星という組み合わせ自体が、この作品のテーマそのものを暗示しているように筆者には感じられる。
殺生石への封印が示す、羅睺の“本来の姿”
羅睺は長いあいだ「殺生石」に封じられていたため、記憶の大半を失っている。
封印が解けたあとの彼は黒猫の姿をしているが、原作3巻で描かれる回想パートによれば、実は元々は人型の姿をしていたとされる。
さらに同じ回想パートでは、江戸時代のころにとある村で土地神として崇められていたという過去も明らかになっている。
つまり羅睺は最初から妖怪めいた存在だったわけではなく、かつては人々に敬われる神に近い存在だったということだ。
そしてもう一つ見逃せないのが、原作3巻の描写によれば、羅睺は誰かに封じられたのではなく、自ら殺生石に憑依し、自分自身を封印したという事実である。
殺生石といえば、日本の伝承では九尾の狐・玉藻前が討伐されたのちに、その怨念が姿を変えたとされる呪いの石として知られる。
いわば“妖怪封印の代名詞”のような存在だ。
羅睺がまさにその殺生石に、しかも自らの意思で身を沈めていたという設定は、単なる猛獣的な物ノ怪ではないことを物語っている。
かつて人間社会を揺るがすほどの災厄をもたらしてしまった過去と、それを悔いる気持ちの両方を抱えた、特別な存在だったことを暗示していると読める。
「なぜ自ら封印を選んだのか」という問いこそが、次に見ていく天鬼との因縁を解く鍵になる。
記憶を失っているという設定も見逃せない。
物語序盤の羅睺は、孤独を好み冷淡な言動が目立つ一方で、内には情の深さと理知的な一面を秘めているキャラクターとして描かれている。
これは「本来の彼がどんな存在だったか」を、読者や視聴者が少しずつ想像で埋めていく構造になっているということだ。
原作3巻では、幼女のような姿をした物ノ怪・芙蓉の幻術によって、弐郎と羅睺が過去の羅睺と対峙する展開が描かれる。
芙蓉は妖気を幻覚として操る力を持ちながら人間に友好的で、公儀隠密局とも協力関係を築いている珍しいタイプの物ノ怪だ。
この3巻こそが「羅睺の正体」を考察するうえでの核心パートだと言っていいだろう。
天鬼との因縁が示す、もう一つの「正体」
羅睺の正体を語るうえで、もう一人欠かせないのが物ノ怪・天鬼(あまぎ)だ。
天鬼は色が半分に分かれた髪型を持つ男性の姿をした物ノ怪で、相手の力を我が物にする「共食い」という能力を持つ。
原作3〜4巻にかけて明かされる因縁の経緯を整理すると、次のようになる。
- かつて天鬼は、幕府に仕える隠密集団「御庭番衆」と戦うにあたり、羅睺に協力を求めた
- しかし羅睺はこの申し出を断った
- 仕返しとして天鬼は、羅睺が守っていた村の人々を喰らい、羅睺の怒りを煽って暴走させた
これによって羅睺は人間と共生できない状況に追い込まれてしまった、と読み解ける。
つまり羅睺が「黒き凶星」として恐れられるようになった背景には、天鬼による意図的な策略があったということになる。
この因果関係を踏まえると、羅睺が自ら殺生石に身を沈めた理由にも、単なる贖罪だけでなく、「二度と天鬼のような存在に利用されないための自衛」という側面があったのではないかと筆者は考えている。
天鬼はその後も同志の物ノ怪たちを集め、公儀隠密局の壊滅を狙う存在として暗躍している。
その仲間の中には、不死身の物ノ怪の王を目指し羅睺を狙う咬牙(コウガ)のように、弐郎の父親と関わりが深いとされる人物もおり、今後の展開に絡んでくる伏線として気になるところだ。
つまり羅睺は、「かつて黒き凶星と恐れられた存在」であると同時に、「今もなお同じ側に引き戻そうとする者たちに狙われる存在」でもある。
彼が弐郎と共に人間側で戦うことを選ぶのか、それとも本来の“凶星”としての側面に引き戻されるのか。
この綱引きこそが、羅睺というキャラクターの正体の核心にある葛藤だと筆者は見ている。
原作4巻では、羅睺の妖力の一部を弐郎が受け継ぎ、他の物ノ怪たちの助けを受けながら力を鍛える修行編が展開される。
弐郎自身が羅睺の力の一部を背負うことになる点は、二人の関係性を考えるうえで重要な事実だ。
アニメ第8話までの展開に見る、羅睺の正体の進展
2026年7月4日からTOKYO MX・BS11などで放送されているアニメ『BLACK TORCH』は、原作コミックスを持つ人気シリーズの待望の映像化だ。
制作体制や配信情報を整理すると、次のようになる。
- 原作:タカキツヨシ(集英社刊)
- アニメーション制作:100studio
- 監督:馬引圭
- シリーズ構成・脚本:市川十億衛門
- キャラクターデザイン:鈴木豪
- 音楽:やまだ豊
主要キャストは以下の通りだ。
- 我妻弐郎:鈴木崚汰
- 羅睺:上田燿司
- 鬼子母神一華:千本木彩花
- 桐原零司:榎木淳弥
- 天鬼:森川智之
- 咬牙:岡本信彦
放送・配信のスケジュールも押さえておきたい。
- 放送:TOKYO MX 毎週土曜22:00〜、BS11 毎週土曜22:30〜
- 配信:ABEMA・dアニメストア・U-NEXT・アニメタイムズほかで地上波同時配信
- 2026年11月5日からはNetflixで全話一挙配信予定と発表されている(※配信日時は変更される可能性があるため、最新情報は公式サイトで確認を)
アニメ公式サイトのイントロダクションでも、黒猫・羅睺の正体について「かつて『黒き凶星』と呼ばれた伝説の物ノ怪だった」という一文が明記されており、原作の核となる設定がそのまま映像化の軸になっていることが分かる。
そして本稿執筆時点の最新話である第8話「Under dog」が、2026年8月22日(土)22:00に放送された。
このエピソードでは、桐原零司と対峙するフードを被った男の正体が、物ノ怪に魂を売り消息不明になっていた零司の双子の兄・桐原真司であることが明かされている。
真司は妖刀・閻魔風(やまかぜ)に憑りつかれ、父親の命を奪って一族から逃げた過去を持つ人物として描かれた。
そして同じ第8話では、弐郎と羅睺の前に突如として天鬼が姿を現す展開が描かれている。
零司サイドの兄弟の因縁と、弐郎サイドの羅睺と天鬼の因縁が、同時に大きく動き出したタイミングと言っていいだろう。
羅睺の正体をめぐる物語が、いよいよアニメでも本格的に核心へ近づいていることがうかがえる回だ。
なお第8話については、編成の都合により北海道テレビ放送で放送時間の変更があった。
当初予定の2026年8月22日(土)26:35からではなく、27:05からの放送に繰り下がっている。
視聴を予定している方は、お住まいの地域の放送時間を事前に確認しておくと安心だろう。
羅睺の正体をめぐる考察・今後の見通し
ここからは筆者個人の見解として、羅睺というキャラクターの正体をどう捉えているかを書いておきたい。
まず私が強く感じるのは、羅睺というキャラクターが「力の強さ」ではなく「名前の由来」で正体を語らせている点の巧妙さだ。
バトル漫画・バトルアニメにおいて、主要キャラクターの正体は往々にして「実は最強のラスボス格だった」「実は裏切り者だった」という力関係やポジションで語られがちだ。
しかし羅睺の場合は、“羅睺”という単語そのものが、日食を起こす見えない凶星という意味を古くから背負っている。
この二重構造は、読み解けば読み解くほど味わいが増す仕掛けだと考えられる。
さらに、羅睺が元々は人型で、江戸時代には土地神として祀られていたという原作3巻の回想エピソードは、個人的にはこの作品を語るうえでもっと注目されていいポイントだと感じている。
「神として敬われていた存在が、天鬼の策略によって暴走し、災厄の象徴に転落していった」という構図は、単なる勧善懲悪ではない苦さを作品全体に与えている。
これは、伝奇バトル作品にありがちな「元は善なる者が呪いや策略によって化物へと変わる」というモチーフの、一つの丁寧な変奏だと筆者は捉えている。
同じ少年漫画・伝奇ジャンルには、かつて人々を守っていた存在が悲劇をきっかけに恐れられる側へ転落するという構図の作品が他にも見られるが、『BLACK TORCH』の場合はそこに「自ら封印を選んだ」という能動性を加えている点が独自性だと感じる。
殺生石という日本の妖怪伝承屈指の“封印装置”に、しかも自らの意思で身を投じていたという設定は、羅睺がかつて人間社会にとってどれほど脅威だったかを、直接描写せずに読者へ想像させる非常に効率的な語り口だ。
個人的には、この「語らずして語る」手法にこそ、原作者タカキツヨシ氏の構成力の高さを感じる。
今後の展開について私見を述べると、天鬼との対比は今後さらに重要度を増していくはずだ。
天鬼が「同志を集めて公儀隠密局を壊滅させる」という明確な破壊衝動を持つ存在として描かれている以上、羅睺がその対極に位置づけられていく可能性は高いと筆者は見ている。
つまり「かつて凶星だったが、弐郎との出会いによって恩を返す側に変わった存在」として、物語の中でより明確に描かれていくのではないかということだ。
そしてアニメ第8話で真司と天鬼という2つの因縁が同時に動き出したことは、物語がいよいよ後半のクライマックスに向けて加速し始めた合図だと感じている。
原作既読者としては、この先の羅睺の過去と、天鬼との因縁の結末に、アニメでどう感情の起伏がつけられるのかが非常に楽しみだ。
なお、放送・配信スケジュールやキャンペーン情報については変動する可能性があるため、視聴を予定している方は必ず公式サイトや各配信サービスで最新情報を確認してほしい。
まとめ
『BLACK TORCH』の羅睺は、かつて「黒き凶星」と呼ばれた伝説の物ノ怪であり、その正体は殺生石への自発的な封印と記憶喪失、そして天文用語としての「羅睺」という名前の由来に深く結びついている。
原作3巻で明かされる、元は人型で江戸時代には土地神として祀られていたという過去、そして天鬼の策略によって暴走に追い込まれたという経緯を踏まえると、彼の正体はただの強大な妖ではなく、神から凶星へと転落し、再び恩を返す側へと歩み出そうとしている存在だと言える。
アニメ第8話で天鬼が姿を現したことで、物語はいよいよ核心へと近づいている。
原作既読の方も未読の方も、今後の放送で羅睺の正体がどこまで明かされていくのか、じっくり見届けてほしい。
よくある質問
羅睺(ラゴウ)とはどんな物ノ怪ですか?
かつて「黒き凶星」と呼ばれた伝説の物ノ怪で、封印が解けたあとは黒猫の姿で弐郎の前に現れる。
なぜ羅睺は黒猫の姿をしているのですか?
殺生石での封印が解けたあとの姿が黒猫であり、原作3巻の回想では、それ以前は人型だったことが描かれている。
羅睺と天鬼はどんな関係ですか?
天鬼はかつて協力を断られた仕返しに羅睺の村を襲い、羅睺を暴走させた張本人であり、現在も羅睺を狙って暗躍する宿敵として描かれている。



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