“泣いて・笑って・ときめいて”――三拍子そろった第9話が「神回」すぎた件
『ウィッチウォッチ』第9話「伽羅へ/新しい友達/デート・ウィズ・ザ・ナイト」は、わずか30分の中に“感情のすべて”が詰め込まれた、まさに奇跡のような一本でした。
泣ける話、笑える話、そして胸がキュンとする話。三本立てという構成に、視聴者の感情がどんどん揺さぶられていく。
それは決してバラバラではなく、一つの作品としての“うねり”を生み出していました。
今回は、
「なんで泣いたのか」「どう作られてたのか」「今だから刺さった理由」
──その全部を、ひとつずつ言葉にして、解き明かしていきます。
【第1話】「伽羅へ」──涙の理由は、“修復”という魔法のかたち
最初の短編「伽羅へ」は、南伽羅(カラ)が亡き母からの手紙を修復してほしいと、ニコたちに依頼するエピソードです。
でもその手紙、なんと……
父・守仁がシュレッダーにかけてしまったという衝撃の事実が明かされます。
なぜ父はそんなことを?
実はこれ、“読まないでほしい”という不器用な愛情の裏返しだったんです。
ニコは魔法「マジョリカバリー」で手紙を修復しようと奮闘しますが、完全には戻せません。
最終的には、ひとつひとつの紙片を地道に仕分けるしかなく……。
ここで描かれているのは、「魔法でも解決できないことがある」という現実。
でも、それでも――それだからこそ、“自分の手で言葉を取り戻す”という行為に、ものすごい力が宿るんです。
シュレッダーという断絶の象徴を乗り越えて、再び母の言葉を読むカラ。
それはただの手紙の修復ではなく、
父と娘の心の断片を“つなぎ直す”魔法でもありました。
SNSでも「涙が止まらなかった」「静かだけど一番泣けた話」と話題に。
派手なバトルもギャグもないのに、ここまで心を動かされるのは、
この作品が“心に触れること”をちゃんと描いているから。
“修復”とは、「なくしたものを取り戻すこと」ではなく、
「今あるものと、どうもう一度向き合えるか」という問いなのかもしれません。
【第2話】「新しい友達」──“英語の教科書みたいな転校生”が、クセになる面白さ
2つ目のエピソード「新しい友達」は、まるで英語教科書の日本語訳のようなしゃべり方をする転校生が登場するギャグ回です。
「わたしは○○です。あなたは○○ですか?」みたいな、“あの独特なテンプレ英語の言い回し”を、日本語でそのまましゃべっちゃう感じ。
最初こそ「何だこのキャラ!?(笑)」と面食らうんですが、見ているうちにどんどんクセになっていく…。
Twitter(X)でも、
「英語の教科書ネタが最高すぎる」
「転校生のクセつよトークにじわじわくる」
という声がたくさんあがっていました。
しかも、ただの一発ギャグじゃなくて──
その違和感のある“言葉のズレ”が、逆にキャラの純粋さや不器用な優しさを引き立てていたりもして。
おかしくて、ちょっと可愛くて、なんか愛おしい。
このパート、前の「伽羅へ」が重めだった分、いい意味で心の緊張をゆるめてくれる役割を果たしているんですよね。
ちょっとシュールな笑いで、視聴者の“感情のバランス”を整えてくれる。
三本立ての構成において、この「緩」の配置はとても上手いなぁと感じました。
ちなみに余談ですが、「この子、絶対海外育ちとかじゃなくて“英語教科書マニア”なんじゃ…?」っていう妄想がはかどる人も多かったのでは(笑)。
【第3話】「デート・ウィズ・ザ・ナイト」──“鈍い彼”と“素直な彼女”の、静かであたたかい距離感
3つ目のエピソード「デート・ウィズ・ザ・ナイト」は、ニコとモリヒトの映画館デートが描かれます。
でも、いわゆるラブコメ的な“ドキドキ爆発”ではなく、じんわりと感情がにじんでいくような、静かなときめきに満ちた回です。
ニコは、モリヒトの感情がよく見えないことに、少しだけもやもやを感じている。
せっかくデートなのに、彼はいつも通り。照れる様子も、喜んでる感じも……ない?
でも視聴者にはわかるんです。
モリヒトは“表に出さないだけ”で、心の中ではちゃんとニコのことを大切に思ってるってことが。
浴衣姿で現れるニコに、ふっと視線を落とすモリヒト。
手をつなぎそうで、つながない距離感。
ポップコーンを渡す瞬間のちょっとした間。
その“表情に出ない感情”を丁寧に描く演出が、本当に絶妙なんですよね。
クライマックスは、花火。
夜空に咲く光の中、ニコは「わたしはモリヒトが好きだよ」という気持ちを、さりげなく、でも真っ直ぐに届けます。
これ、すごく重要な描写なんです。
恋って、「好きかも」って思っても、相手の反応がないと不安になりますよね。
でもニコは、相手の内面を信じて、言葉にするんです。
それって、すごく勇気のあること。
SNSでは「モリヒト不器用すぎて逆に愛おしい」「ニコがまっすぐすぎて泣いた」など、この微妙な心のやりとりに共感の声が多数上がっていました。
テンションの高いラブコメも楽しいけれど、こういう“静かな恋の気配”を丁寧に描けるアニメって、本当に貴重だと思います。
三重構成で心を揺さぶる──“泣いて・笑って・ときめく”の順番に、意味がある
「伽羅へ」「新しい友達」「デート・ウィズ・ザ・ナイト」。
この三本立て構成、ただランダムに組まれたように見えて、実は感情を揺らす“順番”がとてもよくできているんです。
まず最初に「泣ける話」を持ってきたことで、視聴者の感情は一気に深いところまで引き込まれます。
カラの家族の話は静かで地味だけど、そのぶん心の奥まで届く。
だからこそ、次のエピソードが生きてくる。
その次に来るのは「笑える話」。
重めの感動のあとに、英語教科書口調の転校生というギャグ。
このギャップが、むしろ心地いいんです。
笑うことで、観る側の“心の緊張”がほどけていく。
そして最後に、「ときめく話」。
感情がやわらかくなったところで、ニコとモリヒトのデートが訪れる。
静かで、穏やかで、心がふっと温かくなるエンディング。
この構成、まさに“感情のジェットコースター”なんです。
でもそれは、怖くてしんどい揺れじゃなくて──
感情を解放して、最後にはふわっと優しく着地させてくれる、そんな設計。
だからこそ、観終わった後に「いい回だったな……」ってしみじみ思える。
“心に残る回”って、こういう作り方をしてるんだなって、改めて思わされました。
“感情を救う物語”としての『ウィッチウォッチ』
『ウィッチウォッチ』って、一見すると“ギャグ魔法モノ”の印象が強いんですが──
じつはすごく丁寧に「人の気持ち」や「心の距離」を描いてる作品なんですよね。
今回の第9話はまさにそれが色濃く出た回で、
「魔法=何でも解決してくれる便利ツール」ではなく、
「魔法=感情にそっと寄り添う手段」として機能しているのが、本当に素敵でした。
「伽羅へ」では、壊れた手紙を“元通りにする”という魔法の限界にぶつかりながらも、
そこから人の手で“言葉”を拾い直すという尊さが描かれました。
「新しい友達」では、ことばの違和感が生み出す笑いの中に、
他者を理解する難しさと、それを超えた交流の楽しさが潜んでいて。
「デート・ウィズ・ザ・ナイト」では、感情を表に出せないモリヒトと、
まっすぐ想いを伝えるニコのコントラストが、
“伝えること”の尊さをあらためて教えてくれました。
そう、全部に共通していたのは──
「感情って、すぐにわかり合えるものじゃない。
でも、わかろうとすることには、ちゃんと意味がある」というメッセージ。
魔法というファンタジーを借りながら、
ちゃんと現実の私たちに届く、やさしい物語の力がここにはあります。
【まとめ】泣けて、笑えて、ときめく。──それだけじゃ終わらない“心の三重奏”
『ウィッチウォッチ』第9話「伽羅へ/新しい友達/デート・ウィズ・ザ・ナイト」は、
単なる“感情のごった煮”ではありませんでした。
静かに泣かせてくれる物語。
思わず吹き出すようなギャグ。
じんわり胸が温かくなる恋。
この順番、この流れで、視聴者の心をやさしく撫でてくれる──
まさに“魔法のような30分”でした。
でもその裏には、しっかりとした構成の意図や演出の妙があって。
キャラクターたちがそれぞれのやり方で、
“わかりあう努力”をし続けているからこそ、
この作品がこんなにも愛おしく感じられるんだと思います。
「ただ面白い」だけじゃなくて、
「観終わったあと、少しだけ人にやさしくなれる」──
そんなアニメに出会えたことが、ちょっと誇らしい。
次回もまた、どんな感情をくれるんだろう。
『ウィッチウォッチ』という作品に、もっと深く、もっと長く付き合っていきたい。
そう思わせてくれる、かけがえのない30分でした。
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