『天幕のジャードゥーガル』原作・作者について知っておきたいこと

13世紀のペルシアとモンゴルを舞台にした歴史絵巻風のイメージ、天幕と星空 ダーク

『天幕のジャードゥーガル』の原作者は、多摩美術大学出身の漫画家・トマトスープ氏だ。

2021年9月25日から秋田書店のWEBコミックサイト『Souffle』で連載中の歴史漫画で、既刊は2026年7月15日時点で6巻。2026年7月4日からはテレビ朝日系でアニメも放送が始まっている。

「天幕のジャードゥーガル 原作者」「天幕のジャードゥーガル アニメ 作者」などで検索している方は、おそらく次のようなことを知りたいのではないだろうか。

そもそも誰が描いている作品なのか。原作漫画はどこまで進んでいるのか。そしてアニメとはどんな関係にあるのか。

この記事では、原作者トマトスープ氏の経歴と受賞歴を軸に、原作漫画の基本データ、アニメ化の制作背景までを事実ベースで整理していく。

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原作者トマトスープとは?経歴と代表作

まず気になるのは「トマトスープとはどんな作家なのか」という点だろう。

トマトスープ氏は多摩美術大学出身の漫画家である。

主に中世から近世の世界史をテーマにした作品を手がけていることで知られている。

デビュー作は『ダンピアのおいしい冒険』(イースト・プレス、全6巻)。

この作品は『宝島社 このマンガがすごい!2021』のオトコ編で第6位を獲得しており、デビュー時点からすでに評価の高い作家だったことがわかる。

その後、『Souffle』で連載を開始したのが本作『天幕のジャードゥーガル』だ。

歴史ジャンルとしては初めて『このマンガがすごい!2023』オンナ編で第1位を獲得。

さらに文藝春秋『週刊文春エンタ マンガ賞!2022(下半期)』でも最高賞を受け、マンガ大賞2023・2024でも5位にランクインするなど、複数の賞レースで安定した評価を積み重ねてきた。

そして2026年には、第55回日本漫画家協会賞コミック部門大賞を受賞している。

なお、トマトスープ氏は『天幕のジャードゥーガル』と並行して、『WINGS』(新書館)にて『奸臣スムバト』(既刊1巻)も連載中だ。

歴史ものを軸に複数の連載を抱える、いま最も注目すべき歴史漫画家のひとりと言っていいだろう。


原作漫画『天幕のジャードゥーガル』はどこまで進んでいる?

「原作は何巻まで出ているのか」「どこで読めるのか」を押さえておこう。

作品の基本データは以下の通り。

  • ジャンル:歴史漫画
  • 作者:トマトスープ
  • 出版社:秋田書店
  • 掲載サイト:Souffle
  • レーベル:ボニータコミックス
  • 発表期間:2021年9月25日〜連載中
  • 巻数:既刊6巻(2026年7月15日現在)

舞台は13世紀のモンゴル帝国。

第2代皇帝オゴタイ(オゴデイ)の第六妃ドレゲネに仕えた侍女ファーティマ・ハトゥンを題材にしている。

タイトルの「ジャードゥーガル」はペルシア語で「魔術師」「魔女」を意味する言葉だ。

物語は、イラン東部の街トゥースで暮らす奴隷の少女シタラが、学者の未亡人ファーティマに引き取られ学問を学ぶところから始まる。

しかしモンゴル皇帝チンギス・カンの四男トルイの軍勢がトゥースを侵攻し、シタラを庇ったファーティマは命を落としてしまう。

シタラは捕虜としてモンゴルに送られ、「学者の娘・ファーティマ」と身分を偽ってオゴタイ家に仕えることになる。

そして1229年、大会議(クリルタイ)を経てオゴタイが皇帝に即位した後、シタラは因縁の妃ドレゲネと出会い、モンゴル帝国への復讐を誓って動き出す――というのが大まかな筋書きだ。

現在の連載は単行本第6巻の続きにあたる第43幕まで進んでおり、ペルシア総督コルグズをめぐる裁判劇が描かれるなど、物語はまだまだ加速中だ。

なお、原作のより詳細なあらすじやアニメの毎話レビューについては、また別の記事で改めて掘り下げたいと考えている。ここでは「誰が」「どこまで」を軸に押さえておいてほしい。


なぜ「ファーティマ」を主人公に選んだのか?構想10年の制作秘話

原作者を語るうえで外せないのが、この作品がどうやって生まれたのかという経緯だ。

トマトスープ氏は5歳ごろ、内モンゴル自治区のシリンホト市を訪れた経験があるという。

そこからモンゴルへの興味を持ち続け、大学時代からは本格的にモンゴル帝国史を調べるようになった。

『天幕のジャードゥーガル』は、実に10年ほど構想を温めた企画だったことも明かされている。

興味深いのは、当初は主人公をドレゲネにする予定だったという点だ。

しかし、モンゴル帝国という舞台のスケールの大きさを活かすには、もっと動きのある人物のほうがいいと考えたという。

またイスラムの歴史も好きだったことから、最終的にファーティマ(シタラ)を主人公に据えることにしたという経緯がある。

つまりドレゲネは、当初の主人公候補でありながら、現在の物語では「復讐に燃えるシタラの協力者」という重要な立ち位置に変わっている。

この経緯を知ると、ドレゲネというキャラクターの造形の濃さにも納得がいくはずだ。

作画面では、中世の写本に見られる平面的な描き方を意識しているとのこと。

歴史考証だけでなく、絵柄そのものにも「その時代らしさ」を宿らせようとする作家の姿勢がうかがえる。

※画像はAIによるイメージ

アニメ版はどんな体制で作られている?

原作者を軸に見てきた本作だが、2026年からはアニメという新しい形でも展開されている点も押さえておきたい。

アニメは2026年7月4日からテレビ朝日系全国24局ネットの“IMAnimation”枠・BS朝日ほかで放送中だ。

初回は2話連続の1時間スペシャルで、以降は毎週土曜23時30分からのレギュラー放送となっている。

制作を担うのはサイエンスSARU。

『夜明け告げるルーのうた』『DEVILMAN crybaby』『映像研には手を出すな!』『犬王』『きみの色』『ダンダダン』などを手がけてきたスタジオだ。

スタッフ体制は以下の通り。

  • 原作:トマトスープ
  • 総監督:山田尚子
  • 監督:Abel Gongora(アベル・ゴンゴラ)
  • シリーズ構成:加藤還一
  • キャラクターデザイン・作画チーフ:吉田健一
  • 美術監督:樺澤侑里
  • 音楽:日野浩志郎
  • アニメーション制作:サイエンスSARU

総監督の山田尚子氏は『映画 けいおん!』『映画 聲の形』『きみの色』などで知られる演出家。

『映画 聲の形』ではアヌシー国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門に入選し、『きみの色』では上海国際映画祭で金爵賞アニメーション最優秀作品賞を受けている。

監督のアベル・ゴンゴラ氏はスペイン出身。

アイルランドやフランスのアニメスタジオでアニメーターとして活躍したのち、サイエンスSARUに入社した人物だ。

『スター・ウォーズ:ビジョンズ』の「T0-B1」や、Netflixの「スコット・ピルグリム テイクス・オフ」、「ダンダダン」第2期などで監督を務めた経歴を持つ。

主題歌陣も豪華で、オープニングテーマはSEKAI NO OWARIによる「Stella」(作詞:Fukase、作曲:Nakajin、編曲:SEKAI NO OWARI)。

エンディングテーマは女王蜂による「星」が担当している。

またあまり知られていない情報として、本作は放送開始に先駆け、2026年6月にフランスで開催された「アヌシー国際アニメーション映画祭2026」の公式コンペティションTVフィルム部門に選出・正式出品されている。

筆者の把握する限り、国内の歴史漫画を原作とするテレビアニメがこの規模の国際アニメーション映画祭のコンペティション部門に公式出品される例は多くはなく、少なくとも近年の同ジャンル作品の中では目立った動きだと言える。作品の評価が国内の賞レースにとどまらず、海外の映画祭という別の物差しでも試されている点は注目に値する。


原作者とアニメ監督の対談で語られたこと

Souffle公式サイトに2026年7月下旬に掲載された、トマトスープ氏とアベル・ゴンゴラ監督によるスペシャル対談記事では、原作とアニメの表現の違いについて語られている。

正確な掲載日は本稿執筆時点で公式サイト上に明記されておらず、「7月下旬」という時期のみが確認できている点はあらかじめ断っておきたい。

この対談によれば、アニメオリジナルの要素として、第1話冒頭でシタラがトゥースの町を逃げ回るシーンが追加されたことが明かされている。

ゴンゴラ監督は、当時のシタラが奴隷として売買される身でありながら、大人になってもあの時代を懐かしく思う理由をしっかり描いておきたかった、という趣旨の発言をしている。

原作にはない、いわば“自由への憧れ”というテーマを強めるための演出だったということになる。

なおこの対談は、放送直前に公開された山田尚子総監督との対談記事とは別に、放送開始後の反響を受けて改めて実現したもので、いずれもSouffle公式サイト上で読むことができる。

原作者自身も対談の中で、クリルタイのシーンなど、漫画のページ数の都合で描ききれなかった群衆の賑わいをアニメが補完してくれたことに触れている。

そのうえで、全体としては原作に忠実に作ってもらっている、という趣旨のコメントを寄せている点も、原作ファンにとっては安心材料になるはずだ。

なお、アニメが原作のどの巻・エピソードまでを描く予定かについては、本稿執筆時点で公式からの明確な発表は見当たらない。

この点は今後の放送を追ううえで注目しておきたいポイントだ。


評価・受賞歴から見る作品の立ち位置

原作漫画の評価は数字にも表れている。

『このマンガがすごい!2023』オンナ編で歴史物として初の1位を獲得したこと。

そして2026年の第55回日本漫画家協会賞コミック部門大賞の受賞は、業界内外からの評価を裏づける実績だ。

歴史考証に基づいた重厚な物語でありながら、多くの読者・審査員の心をつかんできた。

これは単なる史実の再現にとどまらない、キャラクターの内面描写の強さがあるからだと考えられる。


考察:原作者の“原体験”が物語の骨格を作っている

ここからは筆者としての見解を書いておきたい。

『天幕のジャードゥーガル』という作品の強度は、トマトスープ氏の個人的な原体験に由来していると筆者は考えている。

5歳での内モンゴル訪問と、大学時代からの本格的なモンゴル帝国史研究。この二つが土台にあることが、作品の細部に説得力を与えているはずだ。

歴史漫画において「なぜこの時代・この人物を描くのか」という動機の強さは、作品の説得力に直結する。

当初ドレゲネを主人公にする予定だったところから、より動きのあるファーティマ(シタラ)へと軸足を移した経緯。これは単なる思いつきの変更ではないだろう。

「モンゴル帝国のスケール」と「イスラム世界への関心」という2つの興味をどう両立させるか。それを10年かけて練り上げた結果が、いまの主人公造形なのだと筆者は捉えている。

ここで少し視野を広げてみたい。

近年のアニメ・漫画シーンでは、ユーラシア規模の遊牧民国家や中央アジア史を題材にした作品が、じわじわと存在感を増している印象がある。

たとえば、モンゴル帝国そのものを扱った漫画としては、井上靖の小説を原作とする過去の映像化作品や、シルクロード周辺の交易・戦乱を題材にした歴史群像劇がいくつか存在してきた。近年では、遊牧民国家や中央アジア史を正面から扱う一般向け漫画作品自体がまだ少ないジャンルであり、その中で『天幕のジャードゥーガル』が“征服される側”の女性を主人公に据えた点は、同ジャンルの中でも独自の立ち位置だと筆者は考えている。

征服者の年代記としてではなく、名もなき一人の少女がどう生き延び、何を選び取っていくかという物語にしていること。これが、単なる歴史劇にとどまらない現代的な読みごたえを生んでいる要因のひとつではないだろうか。

またアニメ制作側のコメントにあった「自由というテーマを強く押し出したい」という言葉も見逃せない。奴隷という身分から出発するシタラが、自由に憧れを抱く描写は、原作の複雑な葛藤――奴隷制を単純に肯定も否定もしない姿勢――を、アニメというメディアの文法で翻訳し直した結果だと筆者は捉えている。

原作とアニメ、双方の作り手が「史実の重さ」と「一人の少女の感情」のバランスを丁寧に取ろうとしている。この点こそ、この作品が単なる歴史エンタメで終わらない理由ではないだろうか。

今後、原作は既刊6巻(2026年7月15日時点、連載は第43幕まで進行)からさらに巻数を重ねていくと見られる。史実ではオゴタイの治世やクビライの登場など、モンゴル帝国史の重要な局面がまだ控えている。

原作・アニメともにまだ物語の序盤であることを踏まえると、今後の展開次第でさらに評価が積み上がっていく可能性が高いと筆者は見ている。アヌシー国際アニメーション映画祭への正式出品という実績も踏まえれば、国内の賞レースだけでなく、海外での評価がどう広がっていくかも今後の注目点になりそうだ。

※画像はAIによるイメージ

まとめ

『天幕のジャードゥーガル』は、多摩美術大学出身の漫画家トマトスープ氏が、2021年9月25日から『Souffle』(秋田書店)で連載する歴史漫画である。

既刊6巻(2026年7月15日現在)まで刊行され、『このマンガがすごい!2023』オンナ編1位、第55回日本漫画家協会賞コミック部門大賞受賞という実績を持つ。

2026年7月4日からは山田尚子総監督、アベル・ゴンゴラ監督のもとサイエンスSARUによってアニメ化され、テレビ朝日系全国24局ネット“IMAnimation”枠・BS朝日ほかで放送中だ。放送に先立ちアヌシー国際アニメーション映画祭2026の公式コンペティション部門にも選出されている。

当初はドレゲネを主人公にする構想だったが、モンゴル帝国のスケールとイスラム史への関心から、最終的にファーティマ(シタラ)を主人公とする物語へと結実した経緯も、原作者を知るうえで押さえておきたいポイントである。


よくある質問

『天幕のジャードゥーガル』の原作は今何巻まで出ていますか?

2026年7月15日時点で既刊6巻が刊行されている。連載は『Souffle』で継続中で、単行本収録分の続きにあたる第43幕まで配信されている。

原作者のトマトスープ氏はどんな作家ですか?

多摩美術大学出身の漫画家で、中世〜近世の世界史を題材にした作品を手がける。デビュー作『ダンピアのおいしい冒険』も『このマンガがすごい!』で高評価を得ており、現在は本作と並行して『奸臣スムバト』(新書館)も連載している。

アニメの主人公は本当は別のキャラクターになる予定だった?

トマトスープ氏本人の証言によれば、当初はドレゲネを主人公にする構想だった。しかしモンゴル帝国のスケールを活かせる動きのある人物として、ファーティマ(シタラ)が最終的な主人公に選ばれたという経緯がある。

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